« 明日の家電市場を制するのは誰か? ―その1 3DTVでは変わらない | トップページ | 「成長戦略」に戦略性はあるのか »

明日の家電市場を制するのは誰か? ―その2 ハイテクからEテクへ 

 前回の記事「明日の家電市場を制するのは誰か? ―その1 3DTVでは変わらない」の続編を書きます。前回の主旨は、「新しい技術を売り物にしても、ビジネスモデルが変わらなければ家電業界の構造は変わらないし、日本企業の復権は困難だ」ということでした。

 今回は、日本の家電産業が陥った技術至上主義の袋小路から脱出する方策について、一つの切り口を提示したいと思います。その”ココロ”は、「ハイテクノロジーからE(エモーショナル)テクノロジー」です。今までの家電業界企業は、技術の高さ(=ハイテクノロジー)を競ってきました。しかし結局それはドングリの背比べであり、ハイテクは企業の差別的優位性に結び付かなかったと考えられます。

 企業がハイテクを「これはすごい技術です」と誇示しても、消費者が「これはすごい」と感動することは、もはや稀有といえます。消費者を感動させる技術(=エモーショナルテクノロジー)は、従来のハイテクとは別の方向にあるのだと思います。

□ iPad、大ヒットの秘密

 アップルのiPadが、爆発的なヒットとなりそうです。iPadの競争優位性の源泉は、必ずしもハイテクノロジーではありません。iPadは従来のパソコンに比べて、特段に高いスペックを実現しているのわけではありません。消費者がiPadに「感動した」理由は、技術の高さというよりも、技術と人間的感覚との親和性にあると考えられます。

 iPadの最大の魅力は、ユーザーがストレスなしに使えることにあります。われわれがパソコンを使うときは、時には人間的感覚を曲げてパソコンのルールに従う必要がありますが、iPadは人間的感覚の延長で操作することができます。その心地よさは、多くの人にとって代えがたいものになるでしょう。

 このように機械性能の高さを追及するハイテクではなく、機械と人間感覚との親和性を追及するEテク(エモーショナルテクノロジー)によって、独創的な製品が生まれる余地は少なくないと考えられます。

□ イノベーションの担い手は業界のアウトサイダーがふさわしい

 家電業界は過去数十年にわたって、高度なテクノロジーを用いた製品開発を競ってきました。しかしハイテク化による製品開発の余地は、既に乏しくなっていると言ってよいのかもしれません。過去においてTVやPCは、人々生活を豊かにし、大きな市場を創出しました。しかしながら、今後このような製品が続々と誕生する見通しはありません。さらなるハイテク化は、次世代のTVやPCを生み続けるかもしれません。しかしそれは消費者からみれば、現状のTVやPCの代替品に過ぎず、必ずしも新たな市場を形成するわけではないと思われます。

 これに対して家電業界におけるEテクの追及は、まだ始まったばかりです。今までの技術至上主義的な業界体質の下ではハイテクこそが主流であり、Eテクは亜流にさえなれなかったと言えます。明日の家電業界を制するのは、Eテクにプライオリティを置く、アップルのようなアウトサイダー企業なのかもしれません。

|

« 明日の家電市場を制するのは誰か? ―その1 3DTVでは変わらない | トップページ | 「成長戦略」に戦略性はあるのか »

業界を見る眼」カテゴリの記事