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デフレ時代の価格戦略 ―明暗を分けたすき家と吉野家

 牛丼業界の2強である「すき家」と「吉野家」の、業績格差が拡大してきました。両社が発表した6月の既存店売上高は、すき家が18.7%増、吉野家が15.1%減となり、両者の格差は極端に拡大しました。

 その背景には、両社の価格戦略の違いがあります。すき家がデフレの市場環境に対応し機敏に値下げ戦略を推進する一方、吉野家は価格維持戦略を墨守してきたのです。牛丼のように消費者の価格志向が強い商品の場合、企業の価格対応力が競争のカギを握ります。これは「自明の理」といってよいことなのですが、吉野家はセオリーを無視した経営を変えようとしませんでした。

 デフレ時代に「価格」を重視しない企業は、市場から大きなしっぺ返しを受けます。

□ 「やすい」の優先順位を上げなかった吉野家

 「うまい、はやい、やすい」は吉野家のキャッチフレーズです。このスローガンは、牛丼に対する消費者ニーズを的確にとらえたものとして、高く評価されてきました。しかしながらデフレが再び深まった現在、吉野家のスローガンと消費者ニーズの間には、微妙なズレが生じています。

 現在の消費者ニーズは、おそらく「やすい、はやい、うまい」の順でしょう。デフレ時代の消費者が牛丼に期待することは、圧倒的に「やすい」だと思います。これに対して吉野家は、かたくなに「うまい」の優先順位を1番にしています。そして消費者が最も期待している「やすい」は3番目のままです。

 吉野家の経営陣は、この期に及んでも「当社の牛丼は品質が高いので、値段は高くて当然だ」という趣旨の主張を続けています。単純化して言えば、ここに吉野家の敗因があったわけです。

□ 経営戦略の重要性

 このようにデフレ時代の牛丼業界において、価格戦略の重要性は極めて高いのです。この時代に、最重要の経営戦略を間違ってしまえば、その他の点でどんな優れた経営をしていたとしても、競争に勝つことは困難です。

 もしかすると、吉野家の牛丼は競合他社より断然うまいのかもしれません。そして吉野家は牛丼の品質を維持するために、非常な努力を続けている企業なのかもしれません。しかしながら「価格」という最優先の経営戦略が無視されたままでは、その他の努力は水泡となってしまいかねないのです。

 日常の営業努力だけでは、企業は競争に勝つことはできません。市場が混迷の度合いを増す今日、経営戦略の重要性はますます高まっているのです。

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